「私はね、正論が大嫌いなんだよ」
その同僚の言葉はいまだに忘れられない。ひどく彼らしい言い方だったし――そしてジェサイアとは多分、永遠に相容れないことをその言葉が美事に体現していたからだ。自論を否定されたにもかかわらず、ジェサイアはそれを聞いてどこか嬉しかった。
ジェサイアとイザークの関係は、そういう仲だった。
おのれの性格を、自分でも馬鹿みたいにまっすぐだとジェサイアは思っていた。そしてイザークは、吐き気がするほど狡猾な男だった。ひずんだ性格の持ち主であるイザークには、やっぱり、ジェサイアのまっすぐさは吐き気を催すものだっただろう。
お互いの存在に反吐を吐きそうになるのを抑えて抑えて、それでも二人は、はたからすれば良好な関係を保っていた。仲がいい、と誤解されることもしばしばだったが、それなりにお互いの力量を評価して、これからの将来のためにはそうせざるをえなかったのだ。どちらもこの国の軍の中で高みを目指している。無理に失脚させることはそのうちありうるかもしれないが、相手を見ていると「人を呪わば穴ふたつ」は本当のことになりそうだな、という予感がするので迂闊に手も出せない。
ただ、議論をはじめたりするとその刺々しさが表面化して、牙をむく。過激な議論に発展し、まわりが「こいつら、銃を抜きあうんじゃなかろうか」と思う寸前に、社会的立場をふと思い出して、にっこりと笑いあった。我ながら吐き気のする欺瞞に満ちた微笑で、やあやあ済まないねと握手した。
誤魔化しと誤魔化しと、誤魔化し。それが二人の間にあった、確実なものだ。
ソラリスでもなく、軍でもなく、そしてラケルでさえ、二人の間にあったものではなかった。それらは要素であって、二人の間にあったのは、誤魔化し、それだけだった。
「正論なんて」
イザークは、もう一度軽蔑したようにそう言った。
その折、珍しく二人はオブザーバのいない議論をしていた。いままでずっと避けていた、ふたりきりの議論だった。避けていた理由はただひとつ、誤魔化す必要がなくなったとき、どんなことになるか恐ろしくて考えもつかなから、ということだ。
どうして、ふたりきりで話しはじめたのか、ジェサイアは憶えていない。イザークもまた、ずっと二人が本音をさらしてぶつかり合うことは避けたいと思っていたはずだ。なにかむしゃくしゃしたことでもあったのかもしれなかったが、打算で動く彼には珍しい。本音は隠して、気にしない振りをしておいていずれ毒を盛るようなやり方をする男なのだ。ひきかえジェサイアは、衆人環視の元で完膚なきまで叩き潰すやり方を好んだ。どちらが悪いかは、この際言わない。強さだけがものを言う階梯にあって、善や悪は意味がない。
議論が引きそうな気配はなかった。受けてたたねば、イザークに負けることになる。たとえ二人きりだとしても、それは出来なかった。
ジェサイアはちらりと視線をわずかにイザークからそらして、口を開いた。
「そう言うってことは、俺の主張が正論だって認めたことになるな、イザーク?」
「正論と世間で位置づけられるものが常に最善ではないと言っているのだ。正論とか中道というのは、相対的なものであって絶対的なものではない。おまえがいつも正論だからとごり押ししてくるものは、どこかの軸がずれたら正論でなくなるものだろう」
「それは偏向した意見の正当性を主張しようとする詭弁じゃねえか」
「なにもかもが……と言っているわけではないのだよ。ただそう言うこともあろうといっているだけだ。それを認めないのは、いかにも、王道を突き進むだけの男らしい」
「おまえがそう言う屁理屈をこねている間に、俺は一番おいしいところを持っていけるってわけだな。おまえはそう言いながら、王道で待つ障害を避けているだけだろう。王道が価値を持つのは、正面からぶつかり、勝ち取られたものだからだ。王道だから選ぶわけじゃない。俺が王道にしてるんだよ」
「それこそ思い上がりだ。君が獲得することで他人が失っているものの価値を絶対的な尺度で見てみるといい。それを勝利と言えるのは独善的な判断だ」
「俺だけが俺の取った手段を王道だと言っているわけじゃない。周囲からの支持があってこそ王道になるんだ。なにも洗脳しているわけじゃない」
「それこそが危険だと言っている。だいたい、なぜ多くの人間が正しいと認めたものが正論であると言える? それは性善説に基づいた判断だろうが、民衆と呼ばれるものが常にそのように正しい判断の元で選択を行えるわけではない。このソラリスが千年に渡り存在し続けているのはなぜか? 我々には大衆の意見という不確定要素がないからだ。容易に扇動できる大衆というものが、この国には存在しないからだ。彼らの意思決定の要素となる良識などあやふやなものではないか」
ジェサイアはにやりと笑った。
「おまえの言葉は、俺にはやっぱり負け惜しみに感じるよ。おまえはそんな貧弱な意志しか持たない大衆さえ扇動できない奴だ」
「わたしに言わせてもらえば、君は傲慢はなはだしい人間だよ。獣のように品のない勢いとやらでなにもかも奪いつくす善意に満ちている。君がふりかえった後には荒れ野ばかりが広がっているんでないのを祈っているよ」
イザークも薄笑いを浮かべて、そう言った。
批判と議論の形を借りてはいるが、内容はただの罵りあいだ。
こんな狸と狐の化かし合いを、軍を退官するまで延々と続けていかなければならないというのは反吐が出そうだった。本音を言えば、いますぐにでも軍から追放してやりたい。陥れるネタならお互いに山ほど握っている。ただそれを実行に移さないのは、「人を呪わば穴二つ」のせいだし、軍の中で二人のパワーバランスがあっていまの地位があるのも、確かだからだった。イザークがジェサイアと同じタイプの(つまり王道を進む)人間だったら、とっくの昔に潰している。だが、イザークの蛇のような狡猾さは、ある意味、必要なものだった。イザークにとってもジェサイアもそうだ。
結局のところ、バランスという面では彼らは正しい双璧なのだった。
明るい教会の前庭は難民たちであふれている。このところ増えているウェルスとかいう怪物たちから逃れて来た人々だ。教会の人間は走り回って彼らの傷の手当や、炊き出しに追われていた。安全な場所に逃げて来たというのに、恐怖に強ばった子どもたちの顔は笑うことがない。
兄の手を握りしめ、ぶるぶると震えている少女の傍に、ひとりの司教が腰を降ろして話しかけていた。
「もう、怖くありませんよ。ここでならあなたたちは安全です」
優しげな顔で語りかけていると、少しだけ、少女の顔が緩んだ。その隙を見逃さず、司教は彼女を人びとの輪の中に連れて行った。怯えながらも兄妹は差し出された椀を手にして、食事をし始める。
それを見守る司教の傍に、エトーンの身分を示す外套を纏った少年が近寄った。外套の下はごく動きやすい軽装なので、歳がまだ幼いといっていいせいもあり、その外套を脱いだら彼がエトーンだということはわからないだろう。実際エトーンの中で最も若い。
「ストーン司教」
「ああ、ビリーくん」
「あの子たちも難民なのですね」
子どもたちの姿を見る青い眼は憂いに満ちている。かつて、少年もまたウェルスから逃れてここにやって来たのだ。
「ええ、目の前でご両親を殺されて」
「ますます、似ている気がします」
「……そうですね」
ストーンの頷きの中にあった含みには気がつかず、少年はゆるく首を振った。
「それよりも、司教さま。全員がそろいました。僕が司教を呼びに行くように、と言われましたので、お迎えにあがりました」
「ああ、そうでしたか。お待たせしたようですね。それでは参りましょう」
「はい」
ビリーは僅かに未練があるように背後の幼い兄弟を気にしてふりかえったが、ストーンが歩いていくと、すぐにその後を追った。
ウェルスによる被害は拡大する方向にある。これまでも大きな襲撃が幾度となくあり、そのたびに人の命が失われた。孤児や難民は増え続け、多島海地域はかつてと比べると明らかに傾いていた。その中で唯一、人びとの暮らしを支えているのが教会だ。大陸から送られてくる支援で、人々を涵養し、その一方で、対ウェルス部隊エトーンを組織して対応に当たっている。とはいえ増え続けるウェルスに対してエトーンも万能ではなく、水際で食い止める程度のことしか出来ていない。
新たに大規模なウェルスの活動があったばかりで、エトーン全員が緊急に召集されていた。ウェルス掃討にむかったエトーンも二名ほど命を落としている。戦意高揚を含めた、追悼集会だった。
ストーン司教が聖堂に入ると、そこにはずらりとエトーンが並んでいた。決して数は多くない。ウェルスと戦うのは、当たり前の兵隊に出来ることではないのだ。育成には時間がかかるし、事故率も高かった。ビリーは司教と別れてエトーンたちの列に並び、司教は聖なる壁龕の前に立つと、おもむろに手を組み、目を伏せた。
「神の国へむかった我々の同志たちのために祈りを捧げましょう」
しばらくの黙祷が済んだあと、あらためて司教は話を始めた。
「おそらく、前線で戦っているわれわれエトーン以上に、この頃のウェルスの活動に対して肌で危機感を感じている人々はいないでしょう」
ストーンの話を聞くエトーンたちの顔は真剣そのものだ。並ぶエトーンたちの半分以上は、スタインの部下でもある。つまり、ウェルスが得体の知れぬ妖異ではなく、天上の帝国ソラリスの人体実験のなれの果てだということを知っている者たちだ。だが、壇上から見てさえ、それらを見分けるのは難しい。彼らは、命をもスタインに投げ出しても構わないと考えている忠実な駒なのだった。彼らの忠誠(フェイス)は、真摯に神のために働くものたちの忠誠と区別できないほどのものだ。
「ウェルスたちは日々、苦しみ、悲しみ、劫罰ゆえに人の命を奪おうとします。彼らをその苦悶から解放することが出来るのは、死だけなのです。ウェルスのものであるとしても、その命を奪うことは罪になります。であるとすれば、どうしてその罪を信仰の弱い、心の強靭さの足りない人々に任せることが出来ますか。我々にとってもウェルスと戦うことは苦しい。ですが、我々が果たさなければ、神という拠り所のない弱い人たちにそれを押し付けることになるのです。神への信仰こそがエトーンにとってもっとも大切なこと。それがなければ、我々は命を奪うという罪を犯すことに耐えられないでしょう」
聖堂の扉は決して締め切られてはいない。エトーンたちは前方に集まっていたが、広い聖堂内には一般信者たちも集まりつつあった。
「この中で、まだウェルスの命を断ち切ったことがないという者もいるでしょう。若くしてエトーンに志願し、ようやくその任についた者も、今日は集まっています。襲われている人々を護ってウェルスを苦しみから解き放つとき、それであるにもかかわらず、ウェルスの命を絶つことに罪悪感を憶えないエトーンはいないのです。ウェルスは呪われた存在ではありますが、命であることに変わりはないからです。しかしくじけてはなりません。我々は、正しいことをしているのです。我々が罪に苦しむとき、ウェルスたちは救われているのです。そして死がなければそのウェルスが襲って奪ったかもしれないたくさんの人々の命をも、救ったのです」
ストーン司教の話の最中に、聖堂へと入って来た男の姿があった。難民の一人なのか、あまり身奇麗ではない。ひどく大柄で、群衆の中でもよく目立つ――説教の最中だというのに、珍しいことにストーンの視線がその男を追って泳いだ。
ストーンの側近の何人かは、それに気がついたらしい。だがすぐにストーンは気にならなかったように話を続ける。
「私たちが今日その死を悼む二人のエトーンは、その戦いの中で、自らの命を落としてしまいました。彼らは自らの死の瞬間まで、ウェルスと人びととを救うための誇りを持ち続けていました。彼らは幾多のウェルスを倒し、そのために罪を背負って神の身元へと行きます。ですが、それは神に祝福されうる罪です。神が許してくださる、その信仰があるからこそ、我々は救われるのです。怯んではなりません。ここで我々が任務をなげうつことは、ウェルスを苦悶より解き放つ可能性をなげうつことであり、ウェルスによって損なわれる人びとの命をなげうつことであり、あるいは、ウェルスを自ら倒そうとする一般信徒たちへとウェルスを害するという罪をなげうつことになるのですから」
男は、腕を組んでにやにやと笑いながら壇上のストーンを見ている。実際のところ、それはストーンの知っている男ではなかった。だが、どこかひっかかる。追悼集会でありながらそぐわない笑み。みすぼらしい格好。大きな傷跡の刻まれた面相は、男が安穏と生きているわけではないのを匂わせている。
聖堂が広いだけに、シルエットだけでは別のある男を重ねそうになるのだが、容貌はまったく違う。
ところがだ、説教と祈りが終わり、ぞくぞくとエトーンや信徒たちが出て行く中で、男は立ち尽くしてじっとストーンを見ている。その強い視線には覚えがあった。彼がこの聖堂に入って来て以来、遠い影に何度もその男の面影を重ねては、容貌を見て否定することを繰り返した、その男の視線によく似ているのだ。
何年も前に、見失って以来姿を見かけていない。最後に見たその男の姿は後姿だった。イザーク・スタインが追撃した謀反者だった彼は、あっさりと逃げ延びたのだ。
勘違いではないのかと目を見張るストーンの前で、ひとりのエトーンが、その男の前に立った。後姿でも、それがビリー・リー・ブラックなのはわかる。肩を怒らせた少年は、なにごとかを男に言っているようだ。
間違いない。
変わり果ててはいたが、それはスタインがずっと捜し求めていた――ジェサイア・ブランシュだった。
「なんであんたがこんなところに……!」
「授業参観だよ」
いきり立つ息子の声に、ジェサイアはにやにやと笑って本気では答えなかった。そもそも、目的はビリーではなくて壇上で説教していた男のほうだ。ビリーがあの男の手の内にある、という事態には吐き気がするほどの嫌悪を感じているが、どうにも、いまのところは無理にひきはがしてもうまくいきそうにない。
まだ若い彼は、スタインが(いやストーンって名前だったな、とジェサイアは心の中で改めた)話したいまの作り事を信じているのだ。それがどういうことかを急に報せて、傷つくのを支えられるだけ信頼されてもいない。
何年も放り出していったツケだ。焦って余計にこじらせるつもりはジェサイアにはなかった。
「まあまあ」
ジェサイアはビリーの肩を叩き、彼の抗議を軽く受け流そうとした。
「オヤジはセンセイに話がある。おまえはおうちに帰っていろ」
「あんたは僕のオヤジなんかじゃない、何度そう言ったらわかる!?」
「何度もどうも、俺はおまえのオヤジなんだ。諦めろ」
そう言って、ジェサイアは減り始めた人ごみを掻き分けて、スタインのほうへと歩いてゆく。お互い様変わりしているはずだが、スタインのほうも、彼に気がついているらしい。
あの頃は蛇のようだった男が、いまじゃ教会で説教を垂れている。だれよりも正論を嫌った男が、人を惑わし、欺くためになら、この上もない正論を口にする。……もっとも、それは信じていないからこそ出来ることなのかもしれないが。
ジェサイアは、壇の前に仁王立ちになると、なれなれしい口調で話しかけた。
「ずいぶん、きれいごと並べてるようじゃねぇか」
「……あなた、……ジェサイア」
ずいぶん変わったとあきれ果てているだろうか。実の息子にも信じてもらえないほど、顔を変えた。だが声は変えていないし、彼自身の本質にもいささかの変わりもない。スタインならわかるだろう、とジェサイアは思った。
たぶん、実の息子よりも、お互いを深く深く知っている。それは愛情や友情ではなく、軍の中で頭角を現すために必要だったことだ。ただそのためだけに……ジェサイアはこの男を知っている。
スタインは目の前に立っているのがジェサイア・ブランシュであることを確信すると、微笑んだ。それは先ほどまで浮かべていた「ストーン司教」の笑顔とは似て非なるものだ。見知ったスタインの顔を見て、ジェサイアは興奮するくらい懐かしさを憶える。そうだ、蛇蝎のように残酷で執拗なイザーク・スタイン。冷徹な顔で他人を踏みつけにする男。曲がりなりにも、彼の友人だった。
「久しぶりですね」
「ああ、久しぶりだ」
「ずいぶんと変わられたようですね」
「お互い様だろう」
「さあ。……それで、今日はどんな用向きですか。まさか、出頭して来たわけではないのでしょう? あなたはいまも、大罪人だ」
「俺が俺だって証明するのは生憎ながら、あんたがたの科学力でも無理だぜ」
顔どころか指紋さえ変えた手をひらひらと振って、ジェサイアも笑う。
「ひとつだけ確かめに来たんだよ」
地上へ来てジェサイア自らが建てた家に帰ってみれば、たくさんのものが失われていた。ウェルスに襲われたのだという。だがウェルスとかいうものが自然と人間たちを襲うものではないことを、彼は知っていた。とすれば、この男に聞きたいことはひとつしかない。まだまわりにいる人間を気にして、ジェサイアは声を落とした。
「ラケルを殺したのはおまえか?」
「まさか」
首をふるスタインに、ジェサイアは戸惑った。昔と同じようにそういった迷いを顔に出すジェサイアを、スタインもまた懐かしんでいるようだった。あの頃とまったく同じ高慢な笑みを口元にはいて、彼はおもむろに告げた。
「殺してなどいません。私は彼女を清めてさしあげたんですよ」
「……んだと……!」
「ウェルスたちと同じです。貴様のような獣じみた男から解放してあげたんですよ」
喉の奥で笑い、スタインは勝ち誇って続けた。
「彼女はきっと私に感謝しているでしょうね」
はらわたが煮えくり返る怒りを、ジェサイアは堪えていた。ラケルの死は、話を聞いている限りあまりにも不自然が多すぎて、殺されたのではないかという疑いを消すことは出来なかった。だが多少は思っていたのだと思う。スタインがジェサイアを殺そうとしているのはわかる。とはいえ、彼自身も恋をしていたラケルを殺すだろうか? と。
ビリーとプリムを引き取っているのだから、ラケルは本当に襲われて死んだのであって、ジェサイアへの恨みはともあれラケルの忘れ形見は大事にしてくれているのではないかと甘い願いも少しは持っていた。
だがこの男にそんなことはあるはずない。正論を憎むといってもっともらしい理由をつけながら、スタインを突き動かしているのは怨嗟だ。ジェサイアに勝てない怨嗟、ラケルを手に入れ損ねた怨嗟、彼が彼でしかない怨嗟。
息をついてジェサイアは顔をあげると、スタインを睨み、それから――笑った。
「俺にはやっぱり、おまえの負け惜しみにしか聞こえねえな」
「……勝手に言っているがいい。振り返ってみたらどうだ。ラケルは死んだ。おまえの子どもたちは、私の手にある。おまえに残されているものなどないのだよ」
「悪いがな、ビリーもプリムも、おまえなんざに負けるほどやわじゃねえんだ」
本音でそう言うと、スタインは鼻白んで顔を背けた。それから冷たく言い残して、踵を返す。
「おまえは私が殺す。……ジェサイア」
「俺の方が先だと思うぜ、イザーク」
ジェサイアもそう言うと、踵を返した。
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